pinax
pinax(Playground for INspiring AI eXperiences)
解析の道筋が織り成す新たな気づき、材料研究のための創造的遊び場
- 機械学習の試行錯誤と成果を高い透明性のもと利活用できる「解析・来歴記録・共有」のプラットフォームを提供します。
- 材料データ・機械学習アルゴリズム・モデル・解析結果といったモデル作成プロセスを記録し、機械学習プロセスの再現性を担保します。
- モデル開発や解析のプロセスをネットワークグラフで一元管理し、新たな知見創出によるデータ駆動研究を促進します。
pinaxが目指すもの
pinaxは、機械学習モデル(以下、モデル)の開発の試行錯誤と解析手順を"来歴(以下、プロビナンス)"として記録・管理し、利用者間で共有することで、研究効率と知見創出を加速するシステムです。主な利用者は継続的に多数のモデルを改良するデータサイエンティストや研究プロジェクトですが、個々の研究者も自分のデータの解析の場として活用できます。
最大の特徴は、モデル開発のプロセスをネットワークグラフ(以下、グラフ)として記録・可視化し、機械学習プロセスの再現性を高める点です。入出力や設定値だけでなく、仮説や選択理由、評価の解釈、実行環境・依存関係といった"文脈(以下、コンテクスト)"も紐づけて残します。
pinaxは、(1)自由な試行錯誤を支える「知見創出の場」、(2)NIMSの材料データベースやMDPFの各種データサービスと連携した「データ活用の場」、(3)解析手順やモデルの共有・再利用を促す「知見共有の場」として機能します。蓄積されたネットワークグラフをたどることで、モデルの派生や合流、再利用に適した手順が見え、次の解析の起点が得られます。
その結果、個人環境では難しかったモデル改良プロセスの管理と開発情報の統合が容易になり、知識共有の加速、研究プロセスの効率化、知の横展開、コラボレーションの創出が期待されます。pinaxとともに、プロビナンスの記録とコンテクストの共有を起点とした、データ駆動・材料研究の集合知づくりにトライしてみませんか。
pinaxでできること(主な機能の紹介)
材料データの収集と前処理、モデルの開発、解析結果の評価、知見や作業手順の共有まで、pinaxを使えば一つの環境で完結できます。
データ解析環境の提供
pinaxは、データを扱うオブジェクト管理ツールと、クラウドベースの仮想デスクトップ(DaaS: Desktop as a Service)環境を提供します。pinaxの利用者はこの解析環境にWebブラウザからアクセスし、計算資源や基本的な解析用ライブラリを準備することなく、モデルの開発や材料データの解析を進められます。

※1 MDPFデータを利用した場合はダウンロードに制限があります。
※2 API利用契約により使えるデータ。
材料データベースとの連携
pinaxはMDPFの材料データベースと連携し、物質・材料に関する高品質なデータを、モデルの開発や再利用を通じた多様なデータ解析に活用できます。
解析の試行錯誤の記録
pinaxは、データ解析やモデル開発におけるファイル生成の過程をプロビナンスとして記録し、データ、モデル、解析結果といった要素(ノード)同士の関係をノードの繋がり(エッジ)により表現したネットワークグラフとして表示できます。
各ノードには、「誰が」「いつ」「どんなデータ・アルゴリズム・ワークフロー」を使用したかなど、詳細なプロビナンス情報を紐づけることができます。
これにより、第三者がモデルの構築過程を直感的にたどることができ、その構築プロセスの透明性と実行時の再現性も担保されます。
解析手順・モデルの共有と再利用
解析に用いたデータセット、アルゴリズム/ワークフロー、モデル、解析結果などは、作業単位で「作業セット」として一元管理されます。共有範囲を設定すれば、研究者・チーム間でプロビナンスを安全かつ効率的に共有・再利用でき、モデル開発・活用の知見の水平展開と共同研究を促進します。

(開発中)AIによるおすすめ提案
pinaxはネットワークグラフのプロビナンス情報を活用し、モデル構築・解析・前処理に適したファイルをレコメンドする機能を開発中です。他ユーザーの有効な手法・モデル・活用事例も横断的に抽出して提案し、開発・運用の改善をサポートします。
これらの機能を活用することで、モデルの開発や利用の効率化が可能となり、データ駆動型の材料研究をより速く効果的に進めることができます。
利活用事例
事例1:モデル比較による材料特性予測(来歴管理・精度比較)
本事例では、耐熱鋼のクリープ破断寿命予測[1]で用いられた手法(Support Vector Regression〈SVR〉、Random Forest〈RF〉、Gradient Tree Boosting〈GTB〉)をpinax上で再現し、各モデルの予測性能を評価しました。図1-1のとおり、作業セットのバージョンは途中で分岐します。pinaxはデータの前処理・特徴量追加・パラメータ調整などのプロビナンスを記録し、ネットワークグラフで可視化します(図1-2)。これにより、データソースやモデル作成ワークフロー、モデル間の関係(黒の実線)や、モデルの作成に利用したデータファイルの由来(緑の線)が一目で把握でき、モデルの性能評価結果との対比から有効な手順や改善点を特定できます。結果として、SVRが最も実測に近い予測を示し、RF・GTBも高い性能を示しました(図1-3)。
[1] J. Sakurai, M. Demura, J. Inoue, and M. Yamazaki , Tetsu-to-Hagané Vol. 108 (2022), No. 7, pp.424
事例2:RDE連携による計測データの一元管理とデータ利活用
Fe-Pt薄膜の磁気特性向上の研究を例に、RDE(Research Data Express)に蓄積されたTEM・VSM等の計測データをpinaxで統合し、実験点探索ライブラリ[2]で最適条件を提案、新たな実験条件に反映するサイクルを実施しました(図2)。実施プロセスの流れを図中の矢印の向きにより示しました。RDEのデータに加え、構造化処理で得た特徴量・メタ情報からなるデータも活用し、pinaxを中心に「収集・前処理→解析→共有」までを一貫して行うワークフローとして完結させました。
[2] R. Tamura, K. Tsuda, and S. Matsuda, STAM-M, 3 (2023) pp.1
pinaxの使い方(ガイド集)
pinaxをはじめましょう(利用手続き)
利用開始までの流れ

※テナントとは、pinaxを利用するにあたって、pinaxのシステム上に作成されるグループです。テナントには以下の2種類があります。
単独テナント:単一の組織に所属する利用者からなるテナントです。
共同テナント:異なるテナントの利用者が参加し、共同作業できるテナントです。いずれかの単独テナントに所属する利用者のみ参加可能です。
利用手続きの詳細
- DICEアカウント登録[必須|利用者個人]
- pinax利用者登録[必須|利用者個人]
- 単独テナントの利用申請[必須|利用責任者]
- 単独テナントの利用開始
- 共同テナントの利用申請[任意|利用責任者の承諾を得た利用者]
- 共同テナントの利用開始
- 申請内容の変更、利用終了[適時|利用責任者、利用者]
pinaxを利用するためのアカウントです。
所属組織から貸与されたメールアドレスを使用して「DICEアカウントのユーザ登録」を行ってください。
・ DICEアカウント登録
pinaxサーヒス利用約款を確認のうえ、「pinax利用者登録申請書」を提出してください。
pinaxの利用者登録には次の2つの要件を満たす必要があります。
1. 外為法の要件を満たす者であること
2. 日本国内の法人に属していること
・ pinaxサービス利用約款
・ pinax利用者登録申請書[様式]
所属機関ごとに利用責任者が単独テナントの利用を申請します。
pinaxサーヒス利用約款を確認のうえ、「pinax利用申請書(単独テナント用)」を提出してください。
・ pinaxサービス利用約款
・ pinax利用申請書(単独テナント用)[様式][記入例]
利用が承認されると、利用責任者宛に2通のメール(利用承認通知・システム設定完了通知)が届きます。
システム設定完了通知の手順に従い、pinaxの利用を開始してください。
共同テナントを利用する場合は、所属する単独テナントの利用責任者の承諾を得てたうえで、利用を申請してください。
・ pinax利用申請書(共同テナント用)[様式][記入例]
申請が承認されると、利用責任者宛に2通のメール(利用承認通知・システム設定完了通知)が届きます。
申請内容を変更する場合、利用を終了する場合は、所定の申請書を提出してください。
・ 各種手続きのご案内
- 申請書類の提出先:pinax=nims.go.jp ( [ = ] → [ @ ] ))
不明点やご質問がございましたら、pinax担当(pinax@nims.go.jp)までお問い合わせください。
利用環境
Webブラウザ(Google Chrome, Microsoft Edge, Firefox, Safari)最新版をご利用ください。

