DICE

MDPF利活用事例 Vol. 9

RDEを活用した高密度HDD磁気記録媒体のデータ駆動型開発

高橋氏写真







 高橋 有紀子
 NIMS 磁性・スピントロニクス材料研究センター センター長
 プロフィール

※この利活用事例は、2025年12月23日に開催した第7回 技術開発・共用部門オープンセミナー ~MDPF利活用事例の紹介 [RDE]~(題目:RDEを活用した磁性材料開発 講師:高橋 有紀子氏)を基に作成したものです。

ポイント

  1. データセンター省電力化に向けたHDD磁気記録媒体の高密度化
  2. RDEによる実験データ蓄積と特徴量自動抽出の基盤構築
  3. FePt-BN-C薄膜探索を加速する機械学習サイクルの実証

背景と目的

IoT、IoD、IoHの進展によりデジタル情報量が急増しています。その保存を担うデータセンターでは、ハードディスクドライブ(HDD)が主要なストレージとして使われていますが、電力消費量の増大が大きな課題となっています。HDDの記録密度を高めれば、同じ情報量をより少ない台数で保存でき、省エネルギー化に貢献できます。

本研究では、鉄と白金からなる高磁気異方性材料FePtを用い、次世代HDDに向けた高密度磁気記録媒体の開発に取り組みました。複雑な材料組成や成膜条件を効率的に探索するため、RDEを活用して、実験データの蓄積、特徴量抽出、機械学習用データセット構築、実験条件予測をつなぐ研究基盤の構築を目指しました。

本研究の概要

図1 データ社会の進展により、膨大な情報を保存するデータセンターの電力消費量は増加しています。データセンターの主要ストレージであるハードディスクドライブ(HDD)の記録密度を高めれば、より少ない台数で大量の情報を保存でき、省電力化に貢献できます。(図1)


図2 HDDの記録密度を高めるには、磁気記録媒体中の強磁性粒子を5 nm以下に微細化する必要があります。しかし粒子が小さくなると、熱擾乱によって磁化が不安定になり、情報保持が難しくなります。そこで研究チームは、高い磁気異方性を持つFePtに着目し、微細化しても安定に情報を保持できる次世代磁気記録媒体の開発に取り組みました。(図2)


図3 FePtをHDD用の磁気記録媒体として用いるには、FePt粒子を非磁性材料で分離し、微細組織と磁気特性を両立させる必要があります。FePt-C媒体の最適化や代替材料の探索を進めましたが、経験主導の試行錯誤だけでは限界が見えてきました。そこでRDEを実験データの蓄積・活用基盤とし、材料・画像・プロセスの各インフォマティクスを組み合わせて、材料組成や成膜条件の探索につなげる「媒体シミュレーター」の構築を目指しました。(図3)


図4 その実現に向けて、RDE上でデータ蓄積、特徴量自動抽出、機械学習用データセットの自動構築、NIMO-RDEによる実験条件予測までをつなぎました。さらに、予測条件で実験し、その結果を再びRDEに戻す循環型の研究サイクルを構築しました。(図4)


図5 RDE上に構築したデータ蓄積・特徴量抽出・機械学習の仕組みにより、FePt-CとFePt-BNの既存データを活用して、実験データのなかったFePt-BN-Cを探索しました。その結果、3 Tbit/in²相当の微細組織と磁気特性を持つFePt-BN-Cグラニュラー薄膜の作製に成功しました。今後は、こうしたデータ駆動型研究基盤をさらに生かすため、実験そのもののハイスループット化が新たな課題として見えてきました。(図5)


参考論文

D. Ogawa, R. Akagi, K. Sodeyama, Y. K. Takahashi, "Intrinsic magnetic properties for SmFe12−xTx thin films via high-throughput experiments and machine learning techniques" Sci. Technol. Adv. Mater. Methods, 5 (2025), 2554572.
https://mdr.nims.go.jp/datasets/cf6059d7-0239-466f-af99-8bf4664457cf

本事例で使われたDICEサービス

RDEロゴ   https://dice.nims.go.jp/services/RDE/

セミナーアーカイブ動画


第7回 技術開発・共用部門オープンセミナー動画
(講師:高橋 有紀子氏)

本件に関する問合わせ先

国立研究開発法人物質・材料研究機構
技術開発・共用部門 運営室
Email: mdpf-pr=ml.nims.go.jp ([ = ] を [ @ ] にしてください)

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