DICE

MDPF利活用事例 Vol.8

CDSの活用と連合学習によるクリープ寿命予測モデルの構築

櫻井氏写真







 櫻井 惇也
 NIMS 技術開発・共用部門 材料データプラットフォーム データ活用ユニット
 特任エンジニア
 プロフィール

※この利活用事例は、2026年3月23日に開催した第8回 技術開発・共用部門オープンセミナー ~MDPF利活用事例の紹介 [Creep Data Sheet]~(題目:CDSの活用 - 複数機関の連合学習による秘匿計算で幅広い対象に適用可能な予測モデルを構築 講師:櫻井 惇也氏)を基に作成したものです。

ポイント

  1. クリープデータシート(CDS)を基盤データとして活用し、フェライト系耐熱鋼のクリープ寿命予測モデルを構築
  2. 連合学習により、データを秘匿したまま複数機関で協調
  3. 規格鋼で得た予測モデル構築の知見を、溶接材料や使用材など実用材料へ拡張

背景と目的

耐熱鋼を用いる設備や部材の信頼性評価では、クリープ寿命を高精度に予測することが重要です。NIMSのクリープデータシート(CDS)は、長年蓄積された高品質なクリープ試験データを提供し、機械学習による予測モデル構築の基盤として活用が可能です。一方で、溶接材料や実プラント使用材など、実用上重要な材料への適用には課題がありました。これらのデータは企業や研究機関が保有していることが多く、機密性の観点から一か所に集約することは困難です。本事例では、CDSを出発点に、連合学習を用いて各機関のデータを秘匿したまま協調して学習を行い、より幅広い材料に適用可能なクリープ寿命予測モデルの構築を目指しました。

本研究の概要

図1 CDSに収録されたフェライト系耐熱鋼のデータを用い、組成、試験温度、試験応力などからクリープ寿命を予測する機械学習モデルを構築しました。対象は炭素鋼、低合金鋼、高Cr鋼などの規格鋼で、27シート、212ヒート、5657点のデータを用いました。CDSの体系的なデータにより、規格鋼について高精度な予測が可能であることを確認しました。(図1)


図2 しかし、CDSを用いた予測は主に規格鋼の範囲で有効であり、溶接材料や実プラント使用材など、より実用に近い材料へ適用範囲を広げるには、他機関が保有するデータとの連携が必要でした。一方で、企業等のデータは競争力の源泉でもあり、中央サーバに集約して学習する方法には、データ開示や管理上のリスクがありました。(図2)


図3 この課題に対し、本事例では連合学習を活用しました。連合学習では、各機関のデータを外部に送ることなく、各機関内で学習したモデルのみをサーバに送信します。サーバ側でそれらを統合することで、NIMSと他7機関が、データを秘匿したままグローバルモデルを構築しました。(図3)


図4 評価の結果、NIMSデータだけで作成したローカルモデルは、他機関データに対する外挿的な予測で精度が低下しました。一方、連合学習で得られたグローバルモデルは、各機関のデータ範囲を広くカバーし、他機関データに対しても比較的良好な予測精度を示しました。(図4)


図5 さらに、NIMSデータから離れた領域にある機関のデータに対しても、グローバルモデルでは良好な予測精度を維持できました。CDSを基盤としつつ、各機関の秘匿データの知見をモデルに反映することで、予測モデルの適用範囲を拡大できることを示しました。(図5)


参考論文

櫻井 惇也, 鳥形 啓輔, 松永 学, 髙梨 直人, 日比野 真也, 木津 健一, 森田 聡, 井元 雅弘, 下畠 伸朗, 豊田 晃大, 中村 忠暉, 橋本 憩太, 大久保 達矢,ベヘシティ ロイック, リチャル ヴァンサン, 出村 雅彦
"クリープ破断時間および高温引張強度予測モデルの連合学習", 鉄と鋼, 111 (2025), No.5, 246.
https://mdr.nims.go.jp/datasets/ad78f5b0-2ac7-4836-8212-7bca86e00250

本事例で使われたDICEサービス

クリープデータシート(CDS)https://cds.nims.go.jp/

セミナーアーカイブ動画


第8回 技術開発・共用部門オープンセミナー動画
(講師:櫻井 惇也氏)

本件に関する問合わせ先

国立研究開発法人物質・材料研究機構
技術開発・共用部門 運営室
Email: mdpf-pr=ml.nims.go.jp ([ = ] を [ @ ] にしてください)

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